の様なの馨のする



◆聖夜に◆

 コノエ様へ


××× ×××
カソリック系の施設にずっと育っているお陰で讃美歌などお手の物だ。
美しい旋律。文語調の言葉で綴られた歌詞。
英語で歌うのも好きだが日本語で歌うのもとても好きだ。


 さやかに星はきらめき御子イエス生まれたもう

 永きの闇路を辿りメシアを待てる民に

 新しき朝は来たり栄えある日は昇る

 いざ聞け御使い歌う妙なるあまつ御神よ

 めでたし清し今宵


夜天。息づくように瞬く星を見上げながら口ずさむ。
清らかな夜。冷たい夜の空気は清浄さを極める。
けしてクリスチャンな訳ではないけれども、
聖夜くらいは敬虔な気持ちで降誕の歌を。

あの星は三人の博士らが聖なる御子を捜す道標とした星だろうか。
とすると今、あの星の下には誰がいるのだろう。

いや、そもそも星の下とはどこなんだ?

「ここだろ、」

揶揄するような口調。
どうしてこんな所に居るんだお前。
クリスマスなんだし女の子と一緒だとばかり思っていた。

「こんな日、一人に絞ると他のコが悲しむだろ。愛は、平等に」
「アホか」

聖夜に相応しくない言動に呆れて軽く頭をはたく。
痛いな、と呟きつつ恨めしげに睨んで来るのでそっぽを向いてやった。
“新しき朝”を迎える前の夜。
御子に出会わず代わりに出会った友人、一人。

「朝なんて毎日来るじゃん。日々新鮮なのが」
「救世主が生まれた夜、それが明けた朝なんだってば」
「だってそんな奴俺は必要としてないし?」

猫の目のように瞼を細めて笑う。
月齢28.2。爪の先のような銀月の下。


「そもそもお前さ」
「んー、」
「どうして今日、こんなとこ来た訳、」
「愛は平等に。友情は不平等に」
「何言ってんのお前」

ふざけた口調でそう告げる友人の頭をもう一度はたいた。
頭上に星々。少なくとも救世主ではないだろう。


◆END◆  



 
××× ×××



◆お気に召されたら幸せの極み◆



 
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