[ Y ]


 銀色のコードで囲まれた狭い部屋だ。部屋? なのか? 何処だ此処は。 なんだか進めば進むほど狭くなっていっている気がする。身長よりも天井が低くなって、身を屈めて、 上はそのままで足元が一段ずつ上がっていって、座高くらいの高さの通路を這うようにゆく。
 少しよろけて銀のパイプラインでコーティングされた通路の壁面によっかかり、 耳元で金属同士がぶつかる特有の音がした。ふ、と息をついてまた進む。呼ばれているから。


「…」
 やっとかろうじて空間と呼べる場所にでる。通路を押し広げたような高さの天井と床の。 其処へ足を垂らして今まで這い進んできた道に腰掛けた。其処も酷く狭くて降りれそうには無いようだ。 何本ものコードが上下に曲線的に延びる。マネキンのような腕が突き出ていた。無造作に腕を引っ張った。 簡単に取れた。ちゅ、と口付けてその辺りに投げ捨てた。コードを無理やりへし折ってやると中から鏡が出てきた。
「おーい…」
 其れは俺の眼、俺の髪、俺の耳だ。ピアスまでコピーしちゃってさ…
 ヤツはくす…と笑った。
「オイ…」
 やめろよ。それ、俺の笑い方。チガウだろ?
 自分と同じ顔で同じ様に笑うヤツの顔をじっと見た。見れば見るほど同じ。ヤツはまた笑った。 さっきと同じ様に。それしかしない。
 そうか…新しいデータが無いんだ。あの時点で止まっているから。
 よく見ると少し幼い感じがする。
「何…やってんだよ…」
 このまま壊してやろうか。なあ? 
 にこ、と笑って見せた。
 即座にヤツは真似をした。其れは其れはうれしそうに。
 馬鹿…
「もう、お前なんて知らない」
 にこりと笑んだまま言い放つ。
「俺に拘んなよ鬱陶しい」
 ヤツを抱き寄せてめちゃくちゃにキスをした。
 バリバリと音が聞こえてきそうなほどあっけなくヤツをコートしていたものがはがれていく。脆いな。
 忘れろよ。

「み、…むら」

 忘れろっつってんだろ…!
 目をぎゅっと閉じて口唇に噛み付いた。

 馬鹿だな…







 by 3rd pierce Thank you! xxx

 

 
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